シャープの問題を行動経済学から考えてみる
テクノロジーのコモディティ化が進み、つい最近まで栄華をほこっていた企業がアッという間に蹴落とされる。日経新聞の記事「勝者なき主役交代劇」によると、世界市場で圧倒的な強さをほこった日本企業のシェアが低迷するまでにかかった時間は、DRAMで15年、液晶パネルは10年、そして太陽電池は5年だったそうです。 しかも、2010年に太陽電池市場シェアNo.1の地位を奪いとった中国企業のサンテックパワーは、太陽電池が供給過多になり価格が半分以下になったことで、2013年3月に破産している。
わずか3年。
ここまでくると、「祗園精舎の鐘の声、 諸行無常のひびきあり・・・・ おごれる人も久しからず、 ただ春の夜の夢のごとし」。平家物語の一節をつい思い出してしまう。が、先端技術が長期にわたる安泰をもはや保証してくれない競争市場のまっただなかで、多額の借金をかかえるシャープには、平家物語の一節をうそぶいている余裕はない。
2007年度(2008年3月期)決算で、3兆円を超す過去最高となる売上と1000億円を超す純利益を上げたシャープは、その1年後の決算で、上場以来初めての赤字をだした。そして、現在、1兆円を超える負債をかかえている。
しかし、2004年度の決算をみるかぎり、(このころ、すでに、8000億円を投資して液晶パネルやTVの製造工場を4つもつくっていたが)、負債額を上回る現金や有価証券をもっていたので、シャープは事実上無借金企業でした。2001年に発売した液晶TV「アクオス」はあいかわらず人気も高く、吉永小百合のコマーシャルでブランドイメージもあがり、シャープは日本のモノづくりを代表する優良企業だとマスコミにもてはやされていました。
財務的にもイメージ的にも優良な企業が、今年の9月に2000億円の社債が償還できなければ破産?とウワサされる。この間のシャープの経営戦略の是非については、ビジネス誌や新聞で毎号のように記事が書かれ、経営者の判断ミスが問われ、その裏にある理由として、代々の社長の血縁関係とか役員間の派閥争いまでもが取りざたされています。
シャープのジェットコースター的急降下は「人災」としか思えない・・・というコメントもありました。
考えてみると、ある程度の歴史やある程度の規模の会社が一つの失敗だけでつぶれるものではない。そんな会社が破産の瀬戸際までいくときには、為替や製品価格の変動だけでは説明できないものがあるはずです。どんなに優秀な経営者でも間違いはする。予測がはずれることはある。一つの失敗がすぐに修正されれば、損失はこうむっても、ある程度の規模をもった会社であればなんとか立ち直れる。が、その失敗が放置され、そのうえに新たな失敗が重ねられることになれば、その結果は、明らかに経営者が起こした「人災」なのです。
リーダーシップの研究で有名なシドニー・フィンケルは、ビジネス上あるいは政治上の大きな失敗は、ほとんど例外なく、組織で影響力の高い個人、つまり、トップの人間の判断ミスから発生していると結論づけています。そして、判断ミスの原因を調べてみると、想像以上に単純な理由であることが多い。しかし、この単純な理由は、人間の心理とか本能に密接に関係しているがために、非常に大きな力をもっているとも書いています。
たとえば、① 過去の自分の体験から得た思考や分析の枠組みを現在や未来にあてはめようとする、② 自分の評判やプライドを守ろうとする、③ 自分が始めたプロジェクトとか事業に愛着を感じるように、なにかに感情的に固執する。 問題は、こういった自分の心理的傾向に、本人が気づいていない。あるいは、なんとなく気づいていても、それを無意識のうちに論理的に正当化しようとする。そのために、かえって、ものごとが複雑になってしまうことです。
このブログでは、シャープにおけるリーダーシップを例にとりながら、行動経済学の観点から人間の意思決定について考えてみたいと思います。まず、最初にサンクコストと人間心理です。
シャープは家電メーカーとしては中位でした。そのシャープが、液晶技術を中核として、日本で90年代後半に流行した競争戦略理論にある「コスト・リーダーシップ」と「選択と集中」の戦略を選択したのは、4代目の町田社長の時代です。
1998年、町田社長は「ブラウン管TVすべてを液晶におきかえる」と宣言。
液晶パネルから液晶TVまで一貫生産する戦略で継続して優位にたつためには、どこよりも早く「規模の経済」を実現する必要がありました。2005年までに8000億円かけて液晶用の4つの工場を建設。「世界の亀山」のコピーで有名になった亀山工場も町田社長のもとでつくられました。
ここまでは、よかった。たしかに、積極的投資のため、純資産は低下し、2006年度決算ではキャッシュフローはマイナスになっていました。しかし、新興国が追い上げてきている当時の状況を考えれば、積極投資をして規模の経済を早期に実現しコスト削減をはかることは、戦略的には間違っていなかったし、ある程度のリスクをとることも必要でした。
問題にされているのは、2007年に堺工場建設のために4000億円をこえる投資を決めたことです。この投資に疑問が投げかけられている理由は・・・
- 液晶パネルは当時すでに供給過剰になっていた。31インチTV用パネルは、2004年に$865だったのが、2007年には$300前後に急降下(この値段は、2011年には$149、2013年には$124にまで下落している)。液晶TVの価格自体も米国では2007年には2005年の半分になっていた。
この時点で、液晶に集中投資をするのをやめていれば、破産のおそれまでにはいかなかったであろうと批判されているわけです。
経済学でいうところのサンクコスト(埋没費用)。サンクコストは過去にすでに発生した費用であり回収することはできない。現時点で、どのような行動を選択しようとも、つかってしまったコストが減るわけではない。よって、合理的な経済人は、サンクコストは無視して意思決定をする・・・はずだと、伝統的経済学では教えます。
が、現実の世界においては、サンクコストはいま現在の意思決定に大きな影響を与えます。ダム建設などにみられるように、すでに使った投資額が大きければ大きいほど、ダムの有用性が疑問視され、(八ッ場ダムのように)建設がいったんは中止されても、「これまでの投資が無駄になってしまう」という理由で建設が続行される。この論理は、戦時にもよくつかわれます。2005年米ブッシュ大統領は、「すでに2000人のアメリカ人がイラクで命を落としている。我々がこの任務を達成しなければ亡くなった2000人の米兵の命が無駄になる」とスピーチして、戦争を続行しました(コストにはお金だけでなく時間や労力も含まれます)。
行動経済学は、伝統的あるいは標準的経済学と異なり、人間が不合理な行動をとることはよくあることで、それには一定のルールがあるとし、そのルールやパターンを明らかにしました。たとえば、経営者が過去のサンクコストに影響されて不合理な意思決定する場合によくある理由は、自分の評判を傷つけないため。あるいは過去の選択が間違っていることを隠すために、さらなる投資をつづけるというものです。また、そのプロジェクトや事業に感情的に固執しているという理由もあります。
シャープでいえば、3代目から5代目までの社長すべて「液晶組」出身者であることが指摘されています。液晶事業の礎は1980年代末に奈良の天理工場で始まったプロジェクトにある。このプロジェクトは、社内横断的にメンバーが招集され短期間に事業化を進める緊急プロジェクトの1つであった。よって、かかわった100人あまりのメンバーの多くが後にシャープのいくつかの組織の長となり経営に関与するようになった。結果、辻社長、町田社長、片山社長と歴代3代の社長が「液晶組」出身者。液晶事業への思い入れが人一番あったとしても不思議ではない・・・というわけです。
とくに、4代目の町田社長は液晶でシャープを日本を代表する電機メーカーにまでした貢献者であり、また、有名な亀山工場の建設にもかかわった人です。液晶事業への愛着には大きなものがあったのでしょう。財務状態が悪化したために出資先を探し、台湾のホンハイ精密工業と交渉しているときに、当時相談役だった町田氏は、「亀山工場は俺の”子”だから渡せない」と言った(日経ビジネス2013/4/8)そうです。
液晶事業に子供に対するのと同じ愛着心を感じていたのでしょう。
また、3代目の辻社長と4代目の町田社長は二人とも、2代目の社長の娘婿。親しいといえば親しい。が、親しいがゆえにライバル意識があるといえばある。へんな遠慮もあったりと微妙な関係だったかもしれません。
2008年、5代目片山社長は「既存のパネル工場だけで年間2000万台以上の生産能力がある。うちのアクオスの販売台数を考えたら、それで今は足りる」と発言しています(週刊東洋経済9/1/12)。供給過多の問題はわかっていたのでしょう。わかっていても、堺工場への出資をやめられなかったのは、町田会長への遠慮があったのかもしれません。シャープの栄光を導き10年君臨した町田社長は、5代目片山社長にバトンタッチしたあとも、代表権のある会長として残りました。新社長にしても、液晶事業の軌道を修正するとは言いづらかったかもしれません。町田会長の過去の選択を否定するようなことを避けて、堺工場への投資をつづけたというわけです。
いやいや、シャープの経営者はそこまでバカじゃない。堺工場をつくるときには、シャープにはTV販売だけではなく、パネルを他企業に販売することで生きていく計画があった・・・という説もあります。
たしかに、堺工場への4300億円の投資のうち、34%をソニーに出資してもらう話はありました。ソニーとは、その出費比率に応じたパネルの引き取り義務を課す合意までして、安定需要を確保するとともに、自社の出資額を減らすという、けっこう慎重なリスク対策もとっていたのです。だが、その後の対応をみると、シャープには他企業にパネルを販売するという部品メーカーとしての立場や役割への自覚がなかったとしか思えません。
2009年、エコポイント制度導入で、国内で、液晶TVが爆発的に売れた。その時、シャープは自社への供給を優先して、ソニーとか東芝といったパネル販売先のクライエントにはたびたび納入遅延を起こしています。エコポイントが終了し、液晶パネルへの需要が減るとともに、クライエントはシャープから去っていきました(供給先としてのシャープに見切りをつけたソニーは、2009年末、1000億円で堺工場の株7.04%を取得しましたが、2012年にはその株もシャープに売却しました)。
「外販のノウハウに乏しかった」という言い訳もあります。が、そうではなくて、部品メーカーになることへの感情的こだわりがあったのかもしれません。本来なら、部品メーカーとして仕入れ先をお客様として取り扱わなくてはいけないのに、液晶TVだったらうちのほうがおたくより売れている・・・という態度がつい出てしまったのかもしれません。たとえば、ソニーの元役員は、片山社長の「どこの誰だ?といった偉そうな態度にげんなりした」と語っています(週刊東洋経済2012.9.1)。
2012年、片山社長を継いだ第6代の奥村社長は、労働組合本部を訪れ、2000人の希望退職を募集することを告げるときに、当時を振り返って、「エコポイントでTVが売れたために市場が回復したと判断を誤った」とコメントしています(日経9/15/12)
このコメントをそのまま素直に受け入れるべきではないかもしれません。たんなる言い訳で本当は他の理由があったかもしれません。が、まあ、このコメントが本当だとして、「市場が回復したと思った」なんて、誰が聞いても、楽天的な判断としか思えないでしょう。しかし、「確証バイアス」は誰にでもある認知バイアスなのです。
認知バイアスとは・・・・?
人間は外界の出来事を五感をとおして情報としてとりいれる。そして、脳の中で、情報処理し、考え、反応し、記憶したりする。その情報処理の過程を認知といいます。この情報処理過程において、とくに、感覚を通して出来事を把握する段階において、事実をゆがめてとらえたり、非論理的な解釈をしたりすることがある。結果、不合理な判断をする傾向が人間にはあります。正しい判断基準から逸脱する現象には一定のパターンがあり、これを認知バイアスといいます。こういった情報プロセスにおける歪みは無意識のうちになされることが多いため、ほとんどの場合、本人は自分がしている間違いに気づきません。
さまざまな認知バイアスがありますが、仕事上でよくみられるのが「確証バイアス」です。自分の主張を支持するような証拠だけを選択して、そうでない証拠をしりぞけるというか無視してしまうのが確証バイアスです。エコポイントでTVが売れた! このとき、エコポイントが終了すれば売れなくなるというデータや情報があっても、それを無視し、不況が底をついたとか、景気が良くなるようなことを裏付けてくれる証言とかデータばかりに注意を払ってしまう。シャープの経営陣がそういった確証バイアスで判断を誤ったという可能性はあります。
確証バイアスは自分にとって都合のよい情報ばかりに注意を払うようになるため、不安を軽減することができます。将来を楽天的に考えられるようにしてくれます。だから、不安な状況にある人間ほど、確証バイアスにとらわれやすくなるのです。
「選択と集中」と「規模の経済」は当時の電気メーカーが採用すべき戦略でした(米国に10年くらい遅れて、日本では90年代後半に流行)。また、日本企業の欠点は、思い切りのよい積極投資をしないこと、リスクをとらないこと、ともいわれていました。シャープは、松下とかソニーのような電気メーカーに比べるとちょっと格下とみなされていました。が、日本発の電子レンジ、世界初のオールトランジスタ電卓、業界初のカメラ付き携帯電話・・・など、チャレンジ精神あふれる製品を開発してきた企業です。その企業が「液晶技術」で松下とかソニーを超える可能性をかいまみたとき、それに固執したくなるのは理解できます。液晶パネルの販売で、ソニーなどに、どこかぎこちない態度をとったのも、劣等感と優越感があいまざった複雑な心理からきているかもしれません。
後になって、パネルから製品まで一貫生産する垂直統合モデルの時代は終わリ始めていたとか、為替リスクを少しは考慮するべきだったとかいうのは簡単です。が、それは、行動経済学でいうところの「あと知恵バイアス」です。経営には運も不運もある。たとえば、シャープは円高がつづいたために新興国の液晶メーカーに負けたといわれます。そのときは不運だったとして、アベノミクスで円高になったことで、2012年度下期が営業黒字になり、よって、銀行から融資を受けられるようになった。今年秋の社債償還をなんとか実施することができます。同じ為替で運が悪かったこともあれば、運よく助けられることもあるのです。
シャープで起こったことを「大企業病」という言葉で説明する人もいます。シャープは小さいときには、新しいことに果敢に挑戦する企業でした。日本初とか世界初といった製品を開発する会社でした。大企業になってそれができなくなるのは、「損失回避性」という認知バイアスにとらわれやすくなるからです。
損失回避性は、行動経済学では、人間の不合理な行動の多くを引き起こす重大な認知バイアスです。人間は、損失を利得よりも大きく感じる傾向があります。失うものが少ないときには、経営者もダメモトでやってみようと、大胆にリスクをとる傾向がでてきます。が、大きくなって、守るものがたくさんある、つまり、失うかもしれないものがたくさんあるようになると、損失回避性は強い影響力をもち、経営者がリスクを取ることに躊躇するようにさせるのです。
これが大企業病です。
海外のビジネス誌では、「日本企業には戦略がない」とよく書かれます。日本企業の経営陣に戦略がつくれないとは思いません。ピーター・ドラッカー、フィリップ・コトラー、マイケル・ポーターの本が世界で一番熱心に読まれている国なのです。戦略がつくれないわけがない。世界的コンサルタント会社マッキンゼーが日本のハイテック業界について書いた記事では、「日本のテクノロジー企業は戦略に明瞭さがなく、また、勝利に導く戦略を遂行する経営陣の強い意志の力がない」と書かれています。戦略に明瞭さがないのは選択するのがコワいからです。2つの選択肢があったとしてその一つを選ぶのがコワいのです。だから、あいまいになる。
そういった点では、シャープは偉かったと思います。一つの戦略を選択してまっしぐらに遂行したのです。
戦略は、その言葉通り、戦(いくさ)のはかりごとです。英語Strategyの語源はギリシア語で軍隊の指揮官です。勝つつもりで始めた戦でも、途中で形勢不利になったら、軍の指揮官はその場で決断をしなくてはいけません。引き返すのか、援軍を待つのか。どちらにしもて5000名の命を助けるために、ここで500名の犠牲をよしとするか・・・。それとも、このまま進んで全員討ち死にするか? このときの選択(決断)は、戦を始める前に戦略をきめることよりも、よほど大変な決断です。このとき、指揮官はすべての認知バイアスにとらわれることなく、組織にとってベストな判断をしなくてはいけません。
経営者の仕事は「決断することだ」とよく言われます。私ごとで恐縮ですが、私の父は地方の中小企業で働き40代で社長になりました。それまではまったく信心深いところなどない人でしたが、社長になった途端、その地の有名な神社に毎月1日に参拝するようになりました。その変身ぶりに驚いて理由をきくと、(わずか100名たらずの従業員でしたが)、「社長になって、自分の決断が、社員とその社員の家族、すべての人たちの人生を変えてしまうかもしれないことに気がついた。その責任に気づいて身が震える思いがした」。自分が正しい決断ができるように神にすがりたい思いになったのでしょう。
話はいっきにアメリカの大統領に飛びます。第40代レーガン大統領はナンシー夫人の影響で、重大な決定をするときに占星術師の指示にしたがったとウワサになったことがあります。ことの真否はとにかくも、もし、2つの選択肢があったとして、あらゆる角度から比較しても、どちらにも同等のメリット、デメリットがある。が、どちらかを選ばなくてはいけない。そんなとき、それが国家にとって非常に重要な決断だとしたら、アミダくじではなくて、評判のよい占星術師に選んでもらったほうが良いと思う気持ち。このせっぱつまった気持ちは、組織の上に立つ人間なら理解できることでしょう。
そのくらいに経営者にとって「決断する」ことは肉体的にも精神的にも大変なことのはずです。その点から考えると、欧米の経営者が日本の経営者に比べて莫大な給料を手にするのは許せるような気がしてきます。もちろん、米国のウォールストリート関連企業はもらいすぎだと思うし、自分のせいで会社が傾いたら退職金は減るシステムにすべきだとも思います。でも、経営者の判断ミスが企業が失敗する主な原因であるのなら、莫大な給料を払っても、戦略を遂行する強い意志、そして、認知バイアスにとらわれず間違いを修正することができる人に上に立ってもらいたいと思います。
先に紹介した、リーダーシップ研究者のシドニー・フィンケルは、経営者が認知バイアスにとらわれない方法をいくつか紹介しています。
- 過去の自己体験にとらわれたパターン認識をしないように・・・顧客や仕入れ先、そして現場への訪問をつうじて常に新しい体験をする
- 認知バイアスにとらわれないように・・・・重要事項に関しては、慎重に選ばれたメンバーとグループディスカッションをする
- ガバナンス・・・意思決定者が当該プロジェクトに深く関係している場合は、とくに、組織が自らを健全に管理・運営できるような指揮系統や取締役会の構成になっているようにする
- モニタリング・・・重要な意思決定がもたらした結果の成否を決定する基準を明確にし、結果をチェックし、報酬を決定する
1番目2番目は、経営者が自己反省として自らを律するために利用することができます。問題は、トップ経営者には、自分は認知バイアスなどにとらわれない、誰よりも理性的な人間だと思っている人が多いことです。他人はどうであれ、自分だけはそんなバイアスなどないと自信をもちすぎている人が多い。そんな人には、3番目4番目のチェック(抑制機能)が必要です。が、これは社外取締役の仕事です。
シャープには社外取締役はいませんでした。2009年になって、初めて、1人の社外取締役が選任されています。0人ではもちろん、1人でも、チェックの役目を果たすことはできなかったことでしょう。
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参考文献:1.「勝者なき主役交代劇」、日経新聞4/1/13、2.「儲かる電気、堕ちる電気」、エコノミスト2/12/13、3.「液晶の呪縛、解き放て」、日経ビジネス4/8/13、4.「栄光と挫折の10年」週刊東洋経済9/1/12、5. 「命運握る部品事業」、日経新聞9/15/12、6.危機の電子立国 シャープの混迷」、日経新聞11/20/12-11/24/12、7.「シャープ経営体制刷新」日経新聞5/15/13、8.Sydney Finkelstein, Why Good Leaders Make Bad Decisions, HBR Feb.2009, 9.Ingo Beyer von Mongenstem, et.al., Rebooting Japan's High-tech Sector, McKInsey Quaeterly June 2011、10.「崩壊した液晶王国 本業不振の憂鬱」 週刊ダイヤモンド9/1/12、11.「トップ決断にノー言えず」 日経新聞 5/26/13, 12.「シャープに列強の租借地」日経新聞3/24/13、
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液晶えきしょうき者も遂にはほろびぬ、
偏に風の前の塵に同じ。けき者も遂にはほろびぬ、
偏に風の前の塵に同じ。けき者も遂にはほろびぬ、
偏に風の前の塵に同じ。
資生堂、シャープと日本を代表する企業の分析を読んで森鴎外の「阿部一族」を思いました。
10代で読んだ時は「なんでそうなるの?理解できない。」と思ったのに、気になる小説で何度も読み返し、最近は日本人らしい物語と理解できるようになりました。
情というものに侍もお殿様も経営者もからめ捕られている。そしてその情の世界で周りも動いてしまう。同国人では無理なのかもしれません。情の世界とは無縁の外国人か外国企業で鍛えた人たちにこの際、国を挙げてお願いする覚悟が必要なのかもしれません。
投稿: 猫のおかあさん | 2013年6月 3日 (月) 23:04
猫のおかあさん、
お久しぶりです。お元気ですか?コメント有難うございます。森鴎外の「阿部一族」、私も中学が高校のときに読んだ覚えがありますが、内容は思い出せません。もう一度読んでみます。
投稿: ルディー和子 | 2013年6月 3日 (月) 23:11