環境とブランド(トヨタとウォルマート)
読売新聞」(10/20/07)に「トヨタ学、世界が研究」という記事が掲載されていた。
20年以上にわたってトヨタを研究したアメリカの教授が「ザ・トヨタウェイ」という本を出版した。その「トヨタ学」の権威者が「トヨタの強さは貪欲な効率の追求にある」と語った・・・と、その記事に書いてあった。
貪欲なまでの効率の追求・・・という言葉で思い出すもうひとつの企業は?
もちろん、世界最大の小売業ウォルマートですよね。
そのウォルマートは、いま、環境問題に非常に熱心である。2006年に、1)自社所有の物流トラックの燃費効率を10年以内に2倍に向上、2)店舗におけるエネルギー使用を30%削減 3)、店舗から出るゴミを25%削減する・・・と発表した。取り扱い商品も有機ミルクとか有機綿。アメリカ人が好きな白熱電球より省エネな電球型蛍光灯を奨励販売するそうだ。
「環境」は、アメリカ市場におけるトヨタ自動車のブランディングにも大いに貢献している。
トヨタは価格と機能において他自動車メーカーに圧倒的差をつけ、アメリカ市場で成功した。だが、本当の意味で、ブランド・メーカーとしての地位を確立したのは、高級車レクサスを発売してからだ。そのレクサスも、他のチョー高級車とまったく同じ価格帯で真っ向から勝負して勝てるようになったのは、ハイブリッドカーを発売するようになってからだ。2007年夏に発売したLexas LS600hlは、メルセデスベンツSクラス、BMW7シリーズといったもっとも高いモデルと同じ価格ライン。ただし、ライバルよりも70%もクリーンなクルマなのだ。
環境に配慮したグリーン・カーは、アメリカの高額所得者の「感情」に強くアピールすることができる。
環境問題は「感情」ではなくて」「理性」に訴える問題のような気がする。だが、アメリカでは違う。ハイソやセレブの社会に受け入れられる人間は、教養や品格が求められる(パリス・ヒルトンを除いては・・・(^o^))。チャリティーとか社会性ある行動をとることは、高額所得者層においては「クール」なことなのだ。環境にやさしい高額商品を使わないなんて、上流社会においては恥ずかしいことなのだ。
ウォルマートは、国内市場では、都市部に進出することが最重要事項となっている。だが、これまでのところ成功していない。大都市部の比較的所得の高い市民にアピールするためには「環境」に配慮するグリーンなイメージは重要な条件だ。ちなみに、ウゥルマートのCEOリー・スコット氏は、地球温暖化の勉強をしたあとで、これまで乗っていたフォルクスクスワーゲン・ビートルをハイブリッド・レクサスSUVに代えた・・・・そうです。
ソニー・アメリカも、2007年9月より自社商品すべてを無償でリサイクルすると発表した。家電すべてを無償リサイクルするのはアメリカでも初の試みで、ソニーはブランドイメージ向上を狙っているのだろうと日経新聞(8/18/07)も報告している。
アメリカで高額所得者市場の「感情」にアピールするブランドをつくるには、「環境」がキーワードなのです。
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参考文献:1.Marc Gunther, The Green Machine, Fortune Magazine 7/31/2006, 2. Ian Rowley, High Tech Lexus, BusinessWeek 7/13/07
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