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2018年7月 7日 (土)

新刊「経済の不都合な話」発売されます!

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7月10日ごろ、新しく書き下ろした本「経済の不都合な話」が日経プレミアシリーズ(日本経済新聞出版社)より出版されます。

 タイトルから経済の話?と思われるかもしれませんが、オビのコピーは過激で「社長と経済学者は、読まないでください・・・・・偽善、タテマエ、机上の空論ばかり。現実をあらわさない経済・ビジネス論を排し、人間の本性に基づく『言いづらい真実』を示す」となっています。

 裏表紙には「経済やビジネスをめぐる議論が現実離れするのは、偽善や机上の空論による『お約束』に支配されているからだ。会社存続の動機は『経営者のエゴ』、顧客なんて『不実な愛人』、日銀の約束を誰も信用しない理由・・・。感情が理性より優位に立つ時代、人間の本性に基づいて展開する、少し言い出しにく世の中の真実」となっています。

 興味そそられる宣伝コピーを編集の方が書いてくださいました。内容もご期待に添えるものになっているとよいのですが・・・。富士フイルム、ミクシィー、楽天、ダイエー、パナソニック、シアーズ、テスコ、大塚家具、東芝、ノリタケカンパニー、ユニクロ、マクドナルド、アマゾン、資生堂などの企業が登場します。

 ネットでご購入される皆様方のために、一応、「まえがき」と「目次」を書いておきます。価格は税抜き850円です(アマゾンでの購入用リンク

 まえがき

  変化 の時代と言われるように、経済やビジネスの世界でも、これまで「常識」とされてきたことが次々に覆されている。

 たとえば、経営者なら肝に銘ずべきとされた「企業の目的は顧客を創造することだ」というドラッカーの金言はもはや通用しない。富士フイルムはアナログ写真フィルムの購買者が激減し、新しい顧客を求めて新市場を開拓せざるを得なくなった。ネットの世界に住む企業は有形固定資産が少ない分、変身も比較的簡単だ。既存市場での競争を避けて事業内容を大幅に変える例は多くみられる。

 創造した既存顧客を捨て(あるいは顧客が消滅したために、やむをえず)、新しい顧客を対象に新しい事業を始める企業はもう珍しくない。

 だが、顧客を捨て、既存市場から撤退してまで会社は生存し続けなくてはいけないのか。会社が存在し続けなくてはいけない正当な理由などあるのだろうか――。

 マーケティングや経済学の教科書に書かれている「顧客が知覚する価値が価格を決める」という考え方も、実際には共通認識とは言えなくなっている。価格は価値のひとつだと言い切る小売業の名経営者もいるくらいだ。アマゾンや楽天といったeコマースのサイトをみれば、価格が価値の一要素になってしまっていることは歴然としている。

 変化の時代は、感情優位で意思決定がなされる。米国大統領選挙やヨーロッパにおけるEU離脱の流れを受けて、いわゆる知識層は感情的に動く世情を憂えるコメントを出す。人間は理性的に意思決定すべきだと言う。

 以前から不思議に思っていた。

 なぜ政治家・官僚や知識人は、人間が理性的であることを前提として法律や組織をつくろうとするのだろう――。

 デフレに悩む各国において金融政策を指揮する経済学者にしても、「合理的経済人」を前提とする政策を実行している。それが、理論どおりにインフレ目標が達成できない理由だ。

 金融危機以降、危機を予測できなかった主流派経済学への風当たりは強い。批判の大部分は、人間の感情を含めた心理を無視して数式モデルを構築したことに向けられている。経済学者は人間の感情を無視してもよいと考えているわけではないが、感情すらも数式化しなければいけないと考えている。数式化できなければ科学とは言えないからだ。

 本書では、「人間の感情さえも数式化できる」と経済学者に思わせるほどの影響を与えた2人の知識人にスポットライトを当ててみた。17~18世紀の知識人の多くは優れた数学者でもあった。そして、彼らは感情は悪しきものだとみなし、人間は感情に左右されず論理的に意思決定をすべきだと考えた。数学に長けた先人がつくりあげた合理的意思決定手法と数式を採用したことが、現代の経済学が抱える矛盾につながっている。

 人間の認知プロセスは、情報をありのままに受け入れ処理する仕組みにはなっていない。これは行動経済学や神経科学で、またAIとの比較で明らかにできる。認知プロセスにおけるバイアスは人類が環境に適応するために生まれたものだ。感情は、合理的意思決定の妨げになることもあるかもしれない。だが、感情と論理的思考とが協力しあわなければ、「何を食べるか」といった簡単なことさえ決められないことは科学的にも証明されている。

 それにもかかわらず、知識人や政治家・官僚といったエリートは「人間は理性的で論理的かつ合理的に意思決定すべきだ」と考え、その前提のもとに社会システム(制度、体系、体制)を構築してきた。そして、いま私たちは、「感情」の本来の役割を知らず、「理性」に反する動物的側面とみなしたことによって、手痛いしっぺ返しを受けている。

 人間は、経済的レベルがある程度以上で、自分だけ損をしているという不公平感が少ないときには理性的でいられる。戦後、先進国の多くがそういった社会状況にあり理性が保たれた。感情が席巻する社会は異常ではない。理性的でいられた時代が60年以上続いたことのほうがアブノーマルなのだ。 

 感情が理性より優位に立つ時代において、企業はそして経営者はどう対処するべきかの筆者なりのアイデアも本書で提案した。ここでは「世界観」と「共感」がキーワードになるが、この世界観や共感は通常使われる意味合いとは少し異なる。

 企業とは、あるいは経営とはこうあるべきだと長い間信じられてきた考え方に反論し、経済学という権威ある学問に疑問を投げかけるのには、少なからず勇気を必要としました。この時代に生き働く読者の皆様方に、なんらかのアイデアやヒントを少しでも得ていただくことができたとしたら、筆者にとってはこれ以上ない喜びとなります。

 

 

目次

第1章  「会社は存続すべきもの」という欺瞞

・会社は必ずいつかは消える存在 ・顧客に見放されても生き残る方法 ・コダックに多角化を断念させた圧力 ・株主は特定の会社の存続など望まない ・顧客を捨てて変身する企業 ・顧客データをもつ企業は金融に走る ・ピークを極めたときが衰退の始まり ・金融業を始めると本業がばからしくなる? ・コア事業をおろそかにした末路 ・会社存続の動機は経営者のエゴ? ・「従業員のため」という建前

第2章 価格と価値に翻弄される人々

・価値と価格の逆転―「流通の神様」の選択 ・アマゾンでは価格は価値の一つに過ぎない ・スーパーが見下されたいた時代 ・化粧品業界が固執した価格 ・メーカーと小売りの30年戦争 ・小売業が住む「弱肉強食」の戦場 ・顧客なんて「不実な愛人」みたいなもの ・マクドナルドの挫折 ・ユニクロの心理はメーカーか小売りか 

第3章 科学になりたかった経済学

・経営学やマーケティングに理論などない ・教科書どおりにインフレにならない理由 ・「日銀の約束」など誰も信用しない ・経済学者はおろかなのか、それとも… ・物理学への憧憬 ・定職につけなかった経済学の祖 ・経済学は厳正科学になりたかった ・「合理的経済人」が感情の産物という皮肉 ・ノーベル経済学賞が逃れられない後ろめたさ ・「美しい数式」と絵画や音楽の不思議な共通点 ・数式に魅せられ人間社会を誤認する

第4章 ギャンブルが生んだ机上の論理

・経済学の矛盾をもたらした元凶 ・数学とギャンブルの不可分な関係 ・どこか腑に落ちない確率論 ・神の存在を賭けるということ ・なぜ「神を信じる」のは合理的なのか ・父親の嫉妬と画期的理論 ・客観的価値と主観的価値 ・「主観的価値判断の数式化」の罪と罰 

第5章 人類とAIの超えられない壁

・なぜホモサピエンスは「アバウト」なのか ・社会科学のレノンとマッカートニー ・行動経済学の正しさは実社会が証明する ・人間の脳は欠陥品だが優れもの ・「過去の自分が今の自分をつくる」 ・「安かろう悪かろう」という認知バイアス ・1割くらい重くないと、重量の付加に気づかない ・客観的価値は正確に認知できない ・対数に変換された感覚刺激 ・損失を過大評価する人間の性 ・現状維持バイアスの恐るべき威力 ・「変えなくては」と思ったら、もはや手遅れ ・脳の自動意思決定装置―ヒューリスティクス ・パターン認識で失敗する社長 ・顧問・相談役として遇される無用の人 ・大塚家具のお家騒動と人間の本能的感情 ・誰も知らない「感情」の真の役割 ・本能的感情がなければ行動は起こせない

第6章 大企業が機能しない神経学的理由

・理性の時代から感情の時代へ ・道徳は善でも徳でもない ・理性的であることに疲弊する現代人 ・平等だった年功序列制度 ・内部統制で不祥事は防げるのか ・大企業病をもたらす「大きな群れ」のルール ・社員150人説を信奉するハイテック企業 ・「世界観」と「共感」、そして官僚的組織 ・トランプ大統領の「世界観」に熱狂する人々 ・強制される世界観か心酔する世界観か ・「創業の理念」をどこまでのこすべきか ・「やってみなはれ」と重なるアマゾンの「反対だがコミットする」 ・「チャレンジ」を変容させてしまった東芝 ・大企業は変化の時代にそぐわない ・「一業一社」の原則で会社を分離する ・「人は感激に生き保守に死す」 ・人間は「ある程度の理性をもったサル」と自覚せよ

 

 興味を持っていただけましたらご購入のほどよろしくお願い申し上げます m(_ _)m ペコリ